コラム 第9回
強化をゆるめるリスク
1月に、久しぶり国際大会があった。
私の担当選手は出場しなかったため、日本からの観戦ではあったが、
試合を見ながら私は衝撃をうけた。
海外の選手たちは、コロナ禍の影響を受けてないように見えたからだ。
日本と海外の差は、非常に厳しい状況になっているなと危機感すら覚えた。
例えば、韓国勢は、泰陵(テルン)にあるナショナルトレーニングセンターに選手たちを集め、コロナ禍でも、それまでと変わらず強化練習ができていたと聞く。
その成果が、実力として、そのまま試合に出ていたのは明らかだった。
一方、日本はといえば、代表内定している選手合同で強化合宿を行う予定だったが、緊急事態宣言の延長で、それが延期になってしまい、選手がそれぞれ個別合宿をしている状況だ。
柔道では、所属チーム、または大学の母校で個別合宿を行うという慣習がある。
コロナ禍で、試合もなく、ただでさえ強化の機会が限られている中では、そういった慣習の壁を超えて、選手にとって多様な練習環境をつくっていくために柔軟な対応が求められていくのではないかと思うのだが、母校出身でない代表選手の受け入れを認めない大学もあり、代表選手にとってベストな強化環境を作れていないのが現状だと思う。
同じ環境で、同じ相手とばかり練習していてもレベルはあがらないし、技術的な部分の進化は、モチベーションだけでは補えない部分もある。
合宿の本来の目的は、世界のさまざまな情報を入れること、
そして、いろいろな環境の中で技術を磨き、コンディションをあげ、強化していくことにある。
オリンピック前のこの時期はとくに、技術的な部分の進化の方が大事だが、それが、世界に追いつけていないのだ。
強化を一度ゆるめてしまうと、中長期的に国際競争力に大きな影響が出る。
そのリスクの大きさを今、ひしひしと感じている。
残り少ないオリンピックまでの期間、さまざまな制限があるなかで、多様性ある練習環境をどう作り、選手のコンディションをどう高めていけるか。
コーチとしてできることはなにか。
立ち止まって考えている時間はない。
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